第3章 17:45、あとちょっとでバイトが終わりそうです。
「松野さーん!もし暇だったら、入り口の掃除してくれない?松野さん、18時上がりだったよね!その時間まででいいから!」
『わかりました!』
ただいま17時45分、あるレストランのホールのバイトが終わる直前、入り口の掃除をオーナーから頼まれた。掃除ができるほど、今はとても暇なのである。
6人の兄には、あまりバイト先に遊びに来るな、と釘を刺しているため、訪れたとしても二週間に一回あるかないか。その中でも、よく訪れてくるのはトド松兄さんだ。トド松兄さんは、女の子を連れ込んでペチャクチャ長居して去って行く。
まぁ、トド松兄さんの場合は私に害は起きないし、別にいいんだけど、一番厄介なのが…おそ松兄さんである。つい最近おそ松兄さんが来たときは…
「瑠璃〜お兄ちゃんが遊びに来たよ〜」
『おそ松兄さん…ごめんけど今忙しいから相手できない』
「えぇ〜!?せっかくお兄ちゃんが来てあげたのに!?冷たくない!?」
『冷たくない!混んでるんだから!頼むなら早くして!』
「も〜、瑠璃ちゃんったら冷たいんだから〜。じゃあアイスコーヒー」
『…かしこまりました』
お店が混んでいるときに限って訪れてくるし、しかも頼む物はドリンクのみ。そして、
「瑠璃ちゃーん!お兄ちゃんの相手して!お兄ちゃん寂しい!」
『はぁ!?ここキャバクラじゃないからね!?見てわかんないの!?今、忙しいの!!』
「だって寂しいんだもん。家帰っても誰もいないしさ〜」
『…』
ホールを駆けずり回っていたら、呼び止められてこの様である。おそ松兄さんが構ってちゃんなのは十数年も前から知っていたことだけど、ここまで自己中で構ってちゃんだとさすがにイライラを通り過ぎて呆れてしまう。
それぐらい、6人の兄の中でも一番来て欲しくないのがおそ松兄さんなのである。
カラ松兄さんは、イタイだけであって迷惑はかけないし、チョロ松兄さんも普通にしててくれるし、一松兄さんだってそう(トド松兄さんは一松兄さんにだけは来て欲しくないって言ってたけど)。十四松兄さんだってちゃんと迷惑にならないようにしてくれる。
それなのに。
長男ときたら…。迷惑をかけることしかしていない。