第2章 兄×6は、私に対して反抗期の頃がありました。
『な、なにかって…?』
「…考え込んでたし、表情がなんか硬い」
『えっ』
一松兄さんは、私の顔を覗き込んだ。そんなに表情が硬くなっていたなんて…。
「…兄さんたちに何か言われた?」
『…別に何も』
「何か言われたら僕に言いなよ?」
『うん…』
一松兄さんは私の頭を撫でてくれた。撫で方がとても優しくて、涙が出てきそうになった。そういえば、初めて一松兄さんに頭を撫でられた。
「たっだいま~!!!」
「あ、十四松が帰ってきたっぽい」
『…十四松兄さん』
今、兄さんと顔を会わせるのは怖かった。もしかしたら、十四松兄さんもおそ松兄さんたちのように私のことを嫌っているかもしれない。
「ただいまー!!あ!!一松兄さんと瑠璃も帰ってたんだ!!おっかえり!!」
「ただいま」
『…ただいま』
私たちの居る部屋に顔を出したのはいつもと変わらない十四松兄さんで安心した。でも、もしかしたら十四松兄さんのことだから顔に出さないだけかもしれない。
「…瑠璃、なんかあったー?」
『え…?』
「なんかいつもと違って元気ないよ~?」
『そ、そうかな』
「うん!全然ない!!ナッシング!!アウトー!!」
そう言いながら十四松兄さんは私に向って野球のアウトのサインをしてきた。
『そっか…』
「…なにかあったらちゃんと僕に言ってよ!!力になるからさ!」
「そうそう、僕だけじゃ頼りないかもしれないけど十四松も居たら頼りになるだろ」
「出たー!一松兄さんのネガティブ~!!!」
「もっと蔑んでもいいんですよ十四松さん」
『…あははッ』
仲の良い一松兄さんと十四松兄さんを見ていたら、なんだかほっこりとしてきた。
『本当、一松兄さんと十四松兄さんって仲が良いよね!…羨ましいな』
「…なに言ってんの瑠璃」
「そうだよー!!瑠璃も僕たちと仲良いじゃん!!」
仲が良い…?でも…
「ただいま~」
「あ!!トド松が帰ってきたよ!!トド松にも聞いてみようよ!!トド松~!!おかえり~!!」
「ちょ、十四松兄さん…!」
大声で帰ってきたトド松兄さんを呼ぶ十四松兄さん。本気でやめてほしかった。もしトド松兄さんからも嫌いって言われたらと思うと…。