第5章 無血の花嫁(ルフィ)
「この船に乗るなら、ヨシノはおれが守る。ナミ、お前らのこともな!」
「ルフィ・・・」
「敵が海軍だろうが、海賊だろうが、関係ねェ。お前らの命も、ヨシノの命も、おれが全部守る!!!」
そのために2年間、修行してきた。
たった一人の“肉親”、エースを失ったことで身につけたこの力で。
すると、それまで黙っていたゾロがため息を吐き、ヨシノに野獣のような片目を向けた。
「さっきも言ったけど、お前、腹を括った方がいいぞ。こうなったらコイツ、一歩も引かねェから」
「え・・・?」
「確か俺の時は、刀を返してほしけりゃ仲間になれ、だったか。たち悪ィ勧誘だったな」
今となっては良い思い出なのか、腰に差した三本のうち、白塗り鞘の刀を左手で撫でる。
「それを言うなら、おれぁ、一張羅の海パンを奪われたあげく、返して欲しけりゃ仲間になれ、だったな」
フルチンで水の都を駆けずりまわり、今こうしてサニー号に乗っているフランキー。
「おれなんて・・・おれなんて、バケモノだから一緒に行っちゃいけないって思ってたのに、“うるせェ!!! いこう!!!”って・・・・・・」
チョッパーが帽子を目深に被りながら、クリクリの目を潤ませた。
当のルフィは首をかしげ、“そーだったか?”ととぼけている。
「ねえ、ヨシノさん」
それまで一言も発していなかったロビンが、長い黒髪をかき上げながらヨシノに静かな瞳を向けた。
騒がしい他の船員とは違い、彼女には底知れない思慮深さがうかがえる。
まるで砂の中の壊れやすい遺物を掘り出すように、ずっとヨシノの言葉や仕草を注意深く見つめていた。
「貴方はきっと、ルフィの“弱点”となる」
「・・・・・・・・・・・・」
「貴方が危険にさらされれば、ルフィは本来の目的とは違う方向へ進むかもしれない」
敵にその“弱点”を突かれた時、麦わらの一味は大きな危険にさらされるかもしれない。
「弱点は無い方がいい・・・」
“悪魔の子”と呼ばれる美しい女性。
かつては敵として現れたロビンを、ルフィは仲間として受け入れただけでなく、世界政府を敵に回してでも海に連れ出した。