第5章 無血の花嫁(ルフィ)
「でも、ルフィが貴方を連れていくと決めたのなら、私たちも貴方を守るわ。船長に弱点があれば、私たちは命を賭けてそれを補うだけ」
たとえヨシノのために危険にさらされようと、麦わらのルフィの仲間はそれを恨んだりしない。
船長とその大事な人を守るくらいの強さを、彼らもまた、この2年間で身につけてきた。
誰もロビンの言葉に異を唱える者はいない。
ただ一人、ルフィだけが、“おい、ロビン! それじゃまるでおれが弱い奴みたいじゃねェか!”と憤慨していた。
「おー、そうだぞ! もし、海賊になりたくねェってなら、それでもいいじゃねェか!」
「ウソップさん・・・」
「海賊船に乗っているからといって、海賊にならなきゃいけないっていう決まりはないしな! おれたちみんな、お前を歓迎するぜ!」
海賊になりたくないのなら、ならなくてもいい。
海の上は“自由”なんだ。
麦わらの一味の気持ちは、痛いほどヨシノに伝わった。
ゾロ、ナミ、ウソップ、サンジ、チョッパー、ロビン、フランキー、ブルック。
“賛成”か“反対”かはさておき、船長が決めたことに従うという気持ちは皆同じ。
そして何より、ルフィが幸せになるのであれば、命を賭ける理由としてはじゅうぶんだ。
「なあ、ヨシノ」
ルフィは船首から飛び降りると、ヨシノの手を握った。
「これがおれの仲間だ。こいつらと一緒に海に出たいか?」
ルフィの後ろに広がるのは、限りなく広がる海。
そして、果てしない自由。
この手を・・・伸ばしてもいいのだろうか・・・
この手は・・・届くのだろうか・・・