第5章 無血の花嫁(ルフィ)
「おれはヨシノを幸せにしてェ。だからケッコンするんだ」
「ちょっと待ってよ、ルフィ! じゃあ、この子を海賊にするつもり?!」
ナミはルフィの隣に立っているヨシノに目を向けた。
バオブ島到着後、最初に寄った本屋で、“原住民”についての本を見かけたことが脳裏をよぎる。
ヨシノが身に着ける装飾品や化粧、顔だち、肌の色が、この島の人口の大半を占める移民とは違う。
ということは・・・
「あなた、キラウィでしょ」
「・・・・・・・・・・・・」
黙ったまま頷いたヨシノに、ナミは困ったようにため息を吐いた。
「ルフィ・・・アンタが誰と結婚しようと私は構わない。だけど、この子を連れ出せば、この島が黙っちゃいないわよ」
「なんでだよ」
「あのね、キラウィのダンスには不思議な力があって、その力をこの島は」
「あー、カンコウシゲンにしてんだろ?」
右手の小指で鼻くそをほじりながら、こともなげに言ったルフィにナミは青筋を立てながら“そうよ!”と叫んだ。
「いい? この子を連れ出すということは、島のお宝を盗むのと同じ行為なの。わかる?」
「いーじゃねーか。おれたち海賊なんだし、お前も得意だろ」
「それはそうだけど・・・じゃない! モノと人は違うでしょ!!」
「うるせーなァ・・・」
「そもそも、ヨシノは私たちと同じ、海賊として航海したいと思っているの?」
「・・・え?」
ルフィがこの島から連れ出し、自由にしてくれる。
そのことしか頭になかったヨシノは、ナミの言葉で当然のことを思い出した。
「わ・・・私は・・・」
ルフィと結婚するということは、“海賊”になるということ・・・?
「・・・・・・・・・・・・」
7人と1匹の視線がいっせいに向けられる。
ルフィも大きく丸い目でヨシノを見つめた。