第4章 紫陽花(三井)
「あんとき、ゾーンに入って、バカみてーに周りを信じることができた。だから、今回も信じてーと思う」
ヨシノとは必ず結ばれる運命にある。
「なんでか知んねーけど、お前のコト昔から落とせない気がしねーんだよ」
「ちょっと、人をボールみたいに言わないでくれる?」
三井とヨシノは声を上げて笑った。
これから他人に戻ろうというのに・・・
「だから、お前も信じろ。オレのことも、親父のこともよ」
何年かかってもいい。
安易な道に逃げず、しっかりと認めてもらおう。
「お前がこの先、どれだけイケメンに出会おうが関係ねー。顔だって流川クラスじゃなきゃ、このオレが負けるわけねーもんな」
「プッ・・・なにその自信・・・」
「バーカ、オレを誰だと思ってる」
ニッと笑うその顔は、スリーポイントシューターとして絶頂期だったころとまったく変わらない。
「オレは三井、あきらめの悪い男だ」
こうなったら誰もこの男を止められないことは、あの試合を見た人間なら誰しもが知っていることだった。
「わかった・・・じゃあ、いったんこの指輪は返す」
ずっと肌身離さず身に着けていた婚約指輪を外し、三井の手の平に乗せる。
「高価な指輪はいらない・・・いつかまた、プロポーズしてくれる時にこれをまたプレゼントして」
「おう!」
1年か・・・3年か・・・
それとも、10年か。
何年でもいい、ずっと待ってるから。