第4章 紫陽花(三井)
「なにがあったの?」
「あー・・・まあ、横浜駅の階段から転げ落ちて。脳震とうと肋骨骨折・・・みてーな?」
「どうして横浜駅なんかにいたの?! 今日は仕事でしょっ」
「ウルセーな・・・大きな声出すなよ。まだ頭がクラクラして吐きそうなんだからよ」
「あ・・・ごめん・・・」
確かに、ベッドのそばにはいつ吐いてもいいように洗面器が置いてある。
しかし、三井は笑顔でヨシノを手招きすると、ベッドの淵に座るようにポンポンと叩いた。
「なんか、スゲー会ってなかった気がする」
そばに座るヨシノの手を取り、匂いを嗅ぐ。
その仕草がすごく愛おしくて、額に巻かれている包帯をそっと撫でた。
「ンな顔するなよ。こんくらいのケガ、高校の頃は日常茶飯事だったからな」
「でも・・・どうして横浜駅にいたの? ケンカでもしたの?」
「・・・・・・・・・・・・」
三井は質問に答えることを迷っているようだった。
しかし、ここまで心配させてしまった以上、黙っているわけにはいかない。
「まー・・・大したことじゃねーし、お前には黙っておこーと思ったんだけど・・・」
そう言って、重い口を開いた。