第4章 紫陽花(三井)
午後5時・・・
普段なら、まだ工場での仕事が終わっていないはず。
横浜駅でいったい何をしていたというのか。
それよりも、意識がない状態とは・・・
心臓が痛い・・・
怖い・・・!!
「嫌だ・・・嫌だッ・・・!」
有名なバスケ選手として生意気だった三井も、
挫折を味わって不良に堕ちた三井も、
ドン底から這い上がって再び夢を追いかけた三井も、
作業着に身を包んで汗を流す三井も、
安西先生のアシスタントとして湘北バスケ部を指導する三井も、
全部、全部、好きだ。
“照れくせーから、一度しか言わねーぞ”
お願いだから、どこにも行かないで。
“一生オレのそばにいて欲しい。結婚してください”
宮城君が働いているジュエリーショップで買ったという指輪を差し出しながら、そう言ってくれたじゃない。
「すいません、北村総合病院までお願いします!!」
ようやくつかまったタクシーに飛び乗り、運転手が何か言う前に叫んだ。