第4章 紫陽花(三井)
「ショーホクの女子の制服、カワイーよね」
ゴミ箱の近くには、同じ制服を着崩した3人が座り込んでいる。
暇つぶしを探しているのか、声をかけてきた高校生とヨシノを見てニヤニヤと笑っていた。
「ね、オレ達とアソボーよ」
「すいません、急いでいるんで」
「そう言わずにさ。ショーホクのことを教えてよ」
自分の学校すらまともに通っていないだろう彼らが、湘北のことを知りたいわけがない。
無視してコンビニの中に入ろうとすると、肘を掴まれた。
「可愛いね、お姉さん。ナマエ、なんていうの?」
「・・・離してください」
「“離してください”だって! ビビッてんの!」
ゲラゲラと笑いだす彼らを見て、腹立たしいのと悔しいので顔が熱くなるのを感じた。
1対4だ、どうやっても勝ち目はない。
コンビニの店員に助けを求めた方がいいか?
しかし、高校生が店の前で堂々と煙草を吸っていても注意しないような人達だ、助けてはくれないだろう。むしろ、安易に警察を呼ばれ大ゴトになるかもしれない。
どうして、お菓子なんか買いにきてしまったんだろう。
そう思った、その瞬間。
「な。“まあまあ可愛い”だろ、コイツ」
背後から低いドスの聞いた声が聞こえ、一瞬にしてその場に緊張が走った。
それまで駐車場の車止めに座っていた3人が立ち上がり、ヨシノの後ろにいる“誰か”に向かって威嚇するような目を向ける。
「オレの女に気安く触ってんじゃねーぞ、コラ」
振り返ると、そこにいたは三井と堀田。
特に三井は額に青筋を立てながら、ヨシノの手を掴んでいる学生を威圧的に睨みつけていた。