第3章 はじめの一歩(及川・岩泉)
「ウシワカには勝てない、後輩に天才がいる。俺はすごい焦っていたよ。でも、岩ちゃんだってそうだったんだ」
白鳥沢の牛島という壁にぶち当たった時。
同じウイングスパイカーとして、岩泉の方が牛島との実力の差を感じていただろう。
影山という天賦の才を持つセッターが現れた時。
及川が“あいつには敵わないよ”と愚痴ればいつも、岩泉は怒りを露わにしていた。
それほどまでセッターとして認める及川に、一人では勝てない弱さを突きつけた。
それは、自分の力の弱さを認めることよりも、ずっと屈辱的だっただろう。
“相手が天才1年だろうが、ウシワカだろうが、6人で強い方が強い”
「岩ちゃんに“文字通り”ガツンとやられて目が覚めた。おかげ様で部活を続けられたし、大会ではベストセッター賞も貰った。高校では最高のチームを作ることができた」
岩泉が歩んできた道にはいつも及川がいたように、
及川が歩んできた道にもいつも岩泉がいた。
「岩ちゃんには感謝しているよ」
きっとこの先、さまざまなチームでプレーするだろう。
大学
実業団
日本代表
もしかしたら、海外のチームに所属するかもしれない。
でも、どんなに強いスパイカーとコンビを組んだとしても。
“相棒”と呼べるのは、自分のバレーボール人生の中でたった一人。
「岩ちゃんは俺の自慢の相棒で・・・ちょうスゲェエースだよ」
この先チームが変わっても、それは変わらない。