第2章 カカオフィズ(及川・岩泉)
もし・・・
ヨシノが一人で東京に来ていたら・・・
もし・・・
岩泉がチャイナ・ブルーを飲んでいなかったら・・・
もし・・・
ヨシノに触れようとした自分の手を、岩泉が止めなければ・・・
もし・・・
ヨシノが岩泉の隣で安心しきったように眠っていなければ・・・
「俺はきっと・・・チョコを受け取っていた」
そして、高校を卒業してからの空白を埋めるように抱きしめていた。
“お前は俺の自慢の相棒で、ちょうスゲェセッターだ”
チャイナ・ブルー。
それは、青葉城西高校バレーボール部のユニフォームと同じ色。
“この先チームが変わってもそれは変わんねえ”
この野郎、岩泉一。
俺を倒すんじゃなかったのかよ。
もう一緒のコートに立ってないのに・・・
俺は今もお前のために“セットアップ”してばかりじゃん。
高校最後の試合。
俺からお前へのロングセットアップは、烏野相手に決めきることができなかったけれど・・・
「今度は決めろよ、岩ちゃん」
及川のつぶやきは、その相手に届かない。
しかし、この店でただ一人、マスターだけが瞳を揺らしていた。