第1章 小鳥の巣(リヴァイ)
あの時、奇行種を仕留めようと同期の班の所まで走った。
でも、同期は、ヨシノに別のことを指示した。
“お前はこのまま口頭伝達に行き、加勢を呼んできてくれ!!”
同期はそう叫んでいた。
だが、ヨシノは従わなかった。
“今、他の巨人を私の班に任せてきた! 私もここで戦う!!”
ヨシノは冷静さを欠いていた。
調査兵団全体のことを考えれば、詳細な状況を伝達すべきだった。
同期の言う通りにしていたら、彼の班も全滅せずにすんだかもしれない。
“赤ちゃんに会うんでしょ!! 生きて帰らなきゃ!!”
自分が判断を誤ったせいで、同期は死んだ。
そもそも、自分の実力が足りなかったせいで、巨人を倒すことができなかった。
「兵長・・・私はどうすれば良かったのでしょうか・・・?」
もう長いことここで泣いていたのだろう。
涙どころか、鼻水や涎まで垂れ流している。
「兵長なら・・・どうしていましたか?」
「俺の考えを聞いてどうする」
リヴァイはハンカチを取り出すと、ヨシノの顔をゴシゴシと拭いた。
「俺の考えならば、正しいと思うのか?」
「・・・少なくとも、同じ結果にはならなかったと思います」
「ああ。もしかしたら、お前らだけでなく、加勢に来た兵士まで、全員死ぬことになっていたかもしれねぇな」
全員死ぬ、という思いがけない言葉に、ヨシノは驚いた目でリヴァイを見つめた。
「結果が出たあとに、その時の決断を悔いるのは容易い。だが、結果が出たあとに、その時の決断を変えることは不可能だ」
「・・・そ・・・そうですけど・・・」
「ならば、決断を下した人間がやるべきは、その決断が間違っていなかったと信じることだろう」
たとえ悔いが残ったとしても、前に進まなければならない。
「じゃねぇと、お前の決断で死んだ奴らは、ただの無駄死になっちまうな」
リヴァイ自身、そうして多くの死を乗り越えてきた。
「お前の決断が正しいか、間違っていたかを考える暇があったら、必死こいて信じろ」
そして、その決断が正しいか、間違っていたかなど関係なく・・・
「お前がこの先下す決断は全て、俺が認めてやる。だから、信じろ・・・ヨシノ」
その瞬間、ヨシノの瞳が大きく開いた。