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【短編集】夢工房。

第1章 小鳥の巣(リヴァイ)





“兵長! どうして、私のことをいつもガキって呼ぶんですか?”


“私だって、もう一人前の兵士です!”


バカ野郎。
一人前の兵士を気取るんだったら、奇行種くらい殺してみせろ。


それができねぇのなら・・・


“こんなに小さな命が、必死に生きようと呼吸しているんですよ”


お前が巨人の腹の中でも生き延びようとしているのなら・・・



「てめぇを助けるのは、俺にとって当然のことだ・・・クソガキ!」


その瞬間。

隆々とした筋肉から生み出される、凄まじい力。
眉間に突き刺さったアンカー、最高速度で巻き取られるワイヤー。

二本の刃が巨人の喉元に深く突き刺さり、直径150センチはあろうかという首が一瞬にして吹き飛ばされた。

しかし、冷酷な三白眼をした男は、力を緩めることをしない。

血がべっとりとついた剣を高くかざし、頭のない首から胸にかけて縦に一刀両断にする。

食道と胃を切り開くと、大量の胃液と人体の肉片・・・

そして、いましがた飲み込まれた女兵士が流れ出てきた。

リヴァイはヨシノの体を抱きかかえ、蒸発しようとしている巨人の熱に当たらないよう、距離を取る。

10メートル程離れたところで、ぐったりとしているヨシノを地面にそっと寝かせた。


「おい」

「・・・・・・・・・・・・」


脈はある・・・が、呼吸をしていない。


咀嚼された形跡はないが、胃液に浸かってしまったのだろう。
ハンジの報告では、巨人の胃液そのものは人間を消化する機能がないという。
毒素もないらしいが、体内に大量に入れば何かしらの影響はあるだろう。

リヴァイはヨシノの顎を持ち上げると、唇の間から親指と人差し指を交差させて差し込み、歯を押し広げるようにして口を開けさせた。


「戻ってこい」


巨人の唾液と胃液にまみれたヨシノの顔に、躊躇なく唇を寄せる。

新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込み、口を覆うようにして息を吹き込んだ。

ヨシノの胸が上下し、リヴァイの唇が離れると同時に、吹き入れた息が戻ってくる。


・・・まだだ。
まだ、自分の意志で呼吸していない。


悪臭を放つ巨人の胃液に構わず、リヴァイはもう一度息を吸い込み、ヨシノに口づけた。





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