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【短編集】夢工房。

第5章 無血の花嫁(ルフィ)




シャラン。

ヨシノのものとは違う耳飾りの音が響く。


「・・・!」

キラウィの一人、ムムがヨシノの隣に立ち、友の幸福を祝福するために踊り始めた。

すると、一人・・・また一人と、ヨシノの舞にキラウィの女たちが続き始める。

「みんな・・・?」

「これが・・・この島で踊るヨシノを見るのが最後なら、一緒に踊らないと後悔すると思ったの」

ムムが微笑んだ。


それは、ヨシノのダンスがキラウィたちの本能を高ぶらせた証拠。


いつしか、海賊と島の人間の間では、キラウィ全員が恋人たちを祝福するためにダンスを踊っていた。



「ほう・・・見事なモンだな」

大勢のキラウィを従えて踊るヨシノを見て、ゾロは刀を鞘にしまわずにはいられなかった。
そして、サンジや他の仲間たちと同様、心の底から熱いものがこみ上げてくるのを感じる。

自分と互角かそれ以上の敵を倒した時のような満足感のようであり、世界一の美酒に酔いしれる時のような幸福感のようでもあった。


それは、ヨシノのダンスが覇気を扱う強者たちの本能をも高ぶらせた証拠。


リズム、音楽と融合するように舞うキラウィたちを前に、人々は息を飲みながらその美しさに見惚れていた。



「すげェな、あいつ!!」

世界一の美女、“海賊女帝”ボア・ハンコックの求愛にも動じなかった男が、ヨシノに愛おしそうな瞳を向ける。

ナミはルフィのその笑顔に、確かな“恋愛感情”を悟った。
それは、仲間として嬉しくもあり、少々寂しくもあった。

「結婚か・・・正直、ルフィに先を越されるとは思っていなかったわ」
「じゃあ、ナミさん、おれと結婚する?!?!」
「うるさい」

突然現れたサンジを“天候棒”で叩いたと同時に、頭上に広がっていた雷雲が消えた。
そして、両手いっぱいの星が瞬く夜空が現れる。


「おめでとう、ルフィ、ヨシノ」


ナミがそう呟いた瞬間、キラウィの男が丘の鐘を強く叩いた。



カーン、カーン、カーン・・・


ハートのシャボン玉が浮かぶ島に、澄んだ音色が響き渡り始める。


時刻はちょうど、夜8時を迎えていた。





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