第5章 無血の花嫁(ルフィ)
「私は、直系の血を引くキラウィ。皆さま・・・どうかしばしの間、武器を捨て私の最後のダンスをお楽しみください」
人を悦ばせる舞は、これで最後。
シャランと、耳飾りが鳴った。
舞台も、音楽もない中、ヨシノの細い両腕が宙に舞い、しなやかな両脚が露わになる。
「ヨシノ・・・」
ルフィが自警団を殴るため握っていた拳を緩めた。
「ルフィ・・・私ね、今分かったの」
この妖艶な腰つきは、人を魅了する。
「人を悦ばせるということは・・・人を楽しませるということは・・・」
争いを忘れさせ、そこに笑顔をもたらす。
「人の本能を高ぶらせるということは・・・」
新たな命の誕生に繋がる。
それは、人々に大きな幸福をもたらす。
「キラウィの目の前で争いが起こってはいけない」
軽やかに舞う、キラウィの乙女。
この長い歴史の中で、どれだけのキラウィが許されない恋に泣いただろう。
それでも幸せというものは、誰の上にも平等に降り注ぐ。
そう、キラウィの頭上にも。
「私にできることは、ただ踊るだけ・・・このダンスを捧げた、全員の幸せを祝福するために」
私はルフィと出会うことができた。
これほどの幸せを喜び、祝福するのもまた、私の務め。
「私は幸せよ、ルフィ。貴方が私を連れて行ってくれるというだけで・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「祝福の言葉も、鐘の音もいらない。だから、どうか島の人を傷つけないで」
キラウィの祝福のダンスならほら、私が自分で踊っているから。
鐘だって、貴方がさっき勝手に鳴らしたでしょう?
そう言って、微笑んだ時だった。