第5章 無血の花嫁(ルフィ)
ヨシノが、司祭の・・・いや、島の長の娘?
何も聞いていなかった麦わらの一味全員が、ヨシノを見た。
ルフィも無表情でヨシノに目を向ける。
「あの・・・」
「あのおっさん、本当にお前の父ちゃんなのか」
「・・・・・・・・・・・・」
島の全てを取り仕切る司祭は、実の父親。
だが・・・
「あの人は確かに私の父親・・・だけど、私はあの人の“娘”じゃない!」
“お前の腹から出たガキは、親父が誰だろうとおれのガキだ”
そういう風に言ってくれた貴方なら・・・きっとわかってくれる。
「キラウィの直系である“司祭様”は、一度として私を娘として見てくれたことはなかった」
「ヨシノ・・・!」
「私の恋人が、結婚を許してもらうために頭を下げた時、貴方は彼が移民だったというだけで島から永久に追放した」
「当然だ! お前は、島の収入源であるだけでなく、直系としての血を残していかなければならない、貴重なキラウィなのだから」
「でも、私はもう! 逆さまのテルテルボーズに惨めな自分の姿を重ねたくない!!」
「テルテルボーズ・・・? なんだ、それは!」
ヨシノの気持ちも、言葉の意味も理解しない司祭が首を傾げた、その時だった。
「もういい。ヨシノ、あのおっさんはお前の“父ちゃん”じゃないんだな?」
ルフィが首をゴキゴキと鳴らしながら、静かな声で確認する。
「ええ。あの人はこの島の長であり、司祭。私を“監獄”に閉じ込めていた張本人よ!」
女児が生まれるまで、何人ものキラウィの女性を犯した男。
ヨシノが生まれれば、島の“観光資源”として教育し、女としての幸せも奪った男。
挙句の果てに、キラウィとしてダンスを踊ることも、子孫を残すこともできなくなった母を捨てた。
父親としての愛情は、一切無い。
「そうか・・・わかった」
それを確認したルフィは、息を大きく吸った。