第5章 無血の花嫁(ルフィ)
「お前の腹から出たガキは、親父が誰だろうとおれのガキだ」
もし自由になりたいのなら、自由になればいい。
もし子供が欲しいのなら、キラウィの男と結ばれればいい。
ヨシノの自由も、ヨシノの血を継ぐ子も、全部ルフィにとっては命を賭けて守るべき大切なもの。
「ルフィ、それってヨシノが他の男の人と関係を持つってことよ。いいの?」
「なんだよ、ナミ。仕方ねェだろ、おれとじゃガキができないっていうんだから」
「でも・・・! そもそもアンタ、赤ちゃんの作り方を知ってるの?」
「む! 失敬だぞ、ナミ!」
ナミはもう、ルフィの結婚を反対するつもりはない。
ルフィのヨシノへの気持ちが本気だと分かったからこそ、口を挟まずにはいられなかった。
「自分の奥さんが、他の男に抱かれてもいいの?!」
「それがヨシノの望んでることで、幸せになるなら、好きにすりゃいいだろ。それに・・・」
ヨシノは海賊王の花嫁。
彼女が産み落とした子供は、自分の遺伝子を継いでなくとも我が子とする。
「おれがそう決めた」
そしてもう一度、力強い手を差し伸べる。
「この船に乗れ。そして、おれの花嫁になれ」
海賊王になる男の、求婚。
それは、キラウィのダンスに酔いしれた男女のように情熱的でも、ドラマチックでもない。
だが、その抗いようもない魅力を前に、受けた人間が口にすることのできる返事はたった一つだけだった。