第5章 無血の花嫁(ルフィ)
ヨシノがクスクスと笑っていることに気が付くと、ルフィは嬉しそうに顔を輝かせた。
「ようやく笑ったな!」
「え?」
「おれが花冠を作った時は、自分のこと笑い上戸って言っていたくせによー。この船に来てからずっと、びびった顔ばっかしてたじゃねェか」
ゾロは怖い顔してっし、ブルックはガイコツだもんなー、と笑う船長。
きっと世界が本当に恐れるべき男は彼だというのに、とても無邪気で優しい顔をしている。
「お前、踊るの好きだろ?」
「わ・・・分からない」
キラウィとして生まれた瞬間から、踊り子となる運命が決まっていた。
物心ついた時には腰を振っていたし、踊ることが好きかどうかなど考えたこともなかった。
「そうか? でも、踊っている時のお前、肉食った時にみてェに生き生きしてたぞ」
「それはお前な」
ウソップの鋭敏なツッコミを挟み、ルフィは真っ直ぐな瞳をヨシノに向けた。
「おれはお前の踊りが好きだ。それを見てどうにかなっちまう奴がいるのかどうかは知らねェけど・・・」
ししし!と笑い、麦わら帽子の下から大きな笑顔を見せる。
「お前の力は、おれたちには効かねェ。だから、これからも好きなだけ踊ればいいよ」
誰かを祝福するためでも、誰かを悦ばせるためでもなく。
自分のために、仲間のために。
キラウィとして生まれたことを呪うのではなく、誇りを持ってこの体に染み込んだダンスを舞い続ければいい。
ルフィはまるで羅針盤のように、ヨシノを新たな生き方へと導いていた。