第5章 無血の花嫁(ルフィ)
「私は・・・キラウィ。この島から出ることは許されません」
生まれた時から、海はいつも目の前にあった。
だけど、船に乗ることすら許されなかった。
「私の体は、キラウィ以外の人間の命を宿すことができません」
誰かを愛するということを覚えた時から、心を埋めつくすのは絶望だけだった。
「私の能力は、ただ人の心を昂ぶらせ、快楽の手助けをすること」
命を賭けて自分を守ってくれる人を、同じように守ってあげることができない。
「私は自分に流れる血を、自分の能力を、ずっと呪ってきました」
それでも、憧れた海・・・憧れた自由を私に与えてくれるというのなら・・・
「私は二度と故郷の地を踏めなくてもいいと思っています」
どこか遠い異国の地で死ぬこととなっても・・・
今度こそ・・・愛する人、愛してくれる人のそばにいたい。
「ルフィ・・・みなさん・・・これから、キラウィの全てをお見せします」
ヨシノはルフィの手を放すと、ナミたちの前で一礼をした。
「人の本能を高ぶらせるこの力を見てもなお、私のことを受け入れてくださるのなら・・・」
もし今、この船の中に恋人がいたとしたら、誰かを密かに想っている人がいたとしたら・・・
彼らの気持ちを高ぶらせ、人間本来の欲望をむき出しにさせてしまう。
それを望んでいる人間以外には、ただ卑しいだけの力だ。
ヨシノは肌を覆っていたシャツを脱ぎ、巻きスカートの留め具を、脚の付け根がギリギリ隠れるところまで外す。
「私を海賊として、ルフィの花嫁として・・・この先の海でみなさんとともに命を賭けさせてください」
シャラン、とヨシノの耳を飾る宝石が音をたてた。