第1章 キスの味
「可愛くなんかないです」
和は自分が可愛いということを自覚していない。
「可愛いよ。
なぁ…キスしても良い?」
「さ、さっきの話聞いてました⁉︎」
「ん?聞いてたよ。
我慢しなくて良い、てか我慢すんな」
そのままの和を好きになったんだから。
「…良いんですか…?」
心配そうに上目遣いで尋ねて来る。
本当、無自覚ってある意味最強だよな。
「おう」
我慢しない和ってあんま見たことねぇかも。
いつもなんだかんだで我慢ばっかしてるし。
優しいからな…。
「潤くん…早く」
考えごとをしていると、和に急かされた。
「ん、分かった」
和の顎を右手で持ち上げ、唇を重ねる。
「ん…ぅ…」
ただの触れるだけのキスなのに、甘い声が出す和。
本来はこうなんだろうな。
遠慮がちに俺の首に両手を回している。
俺にぐらい遠慮すんな、その想いを込めてしっかり手を回させる。