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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


「そんな顔には見えませんよ…」

黙って下を向けば、墨が髪の毛だけではなく着物にまで散っているのが見える

「湖様」

墨がついている髪を気にせず触れてくるその人の手が見えれば
飲込んでいたしゃっくりも、涙も
またあふれ出しそうになってしまう

「み、…みつな、りくん…」
「はい」

三成は自分の着物が汚れるのも気にせず、湖を抱き上げその表情を下から覗き混んだ
悔しそうに眉をしかめて泣く湖を

「…まずは、湯殿に参りましょう」

にこりと微笑む三成
その顔を見れば、やはり涙がこぼれ落ちてしまうのだ
湖は隠すように三成の首に手を回すと、肩に顔を隠すように押し当てた

側にいた女中に湖の着替えと、湯の支度を頼み
湯殿の方へ歩き出した三成

そんなことになっているとは知らず勉強部屋に戻ってきた兼続と白粉
兼続の大声が響いた

「な…な…っ、何事で御座いますかっ!?幸村殿!!」
「俺じゃねー」

幸の袖口は未だ喜之介に捕まれたままだ

散らかった部屋
つい先ほどまで綺麗に整えられていた部屋は、文机が倒され、書物が散らかり、墨まで散っているのだ

「……湖はどうした?」

部屋を見渡した白粉が喜之介に尋ね聞く
すると、喜之介は白粉を見てぎくりと背を揺らした

「喜之介…これは、まさか…お主の仕業か…っ」
「い、いいえ。俺だけじゃ…いや、俺が悪いんです…」

兼続の質問に答えると、白粉に向かって頭を下げた喜之介は

「すみません…っあいつ…湖に貴方の事を話してたら…俺、酷いことを言って…」

白粉は何も言わずに喜之介を見る

「だから、あいつ…怒って…俺、酷い事」
「いい」

何を言おうとしているのか察した白粉が、喜之介の言葉を止めた

「白粉殿…」

兼続に呼ばれ、そちらを向くと悲しげに微笑んで頷くのだ
そして喜之介の方に寄っていき、視線を合わせるように膝をつけると

「私は妖。言われずともどう思われるか自覚しているつもりだ。湖が怪我をさせたか…悪かったな。あとで謝らせるが…あれは頑なだからな…私から詫びておく。すまないな」

傷を確認すると触れるか触れないか、傷をなぞるように指を沿わす

「っ、ちがっ・・」

喜之助が声をあげれば
立ち上がった白粉は、部屋を出ようとする
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