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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


「白粉殿、少しよろしいですか?」
「…なにかあったか?」

縁側に腰掛けていた白粉が、兼続の方を振り向けば

「着物が仕立て上がり、仕立屋が来ております」
「……」

長身の白粉の着物はほぼ仕立てないといけなかった
それが届いたのだが…
あからさまに面倒そうな表情を浮かべた白粉に兼続は「行きますぞ」と、白粉の腰を上げろと言うのだ

「湖様、喜之介。少しの間、各自自習をしていてくだされ」

それに湖も喜之介も了承の返事を返す

「はーい」「解りました」

(最初はどうなるかと思えば…やはり子どもだ。お互いわかり合えたようですな)

にっと笑うと、白粉と共に部屋を離れた兼続

しばらく二人はお互いに課せられた書物を読んでいたが…

「…喜之介、ここの文字教えて」
「どれ?」
「ここ」
「…囲師には必ず闕き、窮寇には迫ることなかれ…「きゅうこう」な。お前、孫子なんて理解できるのか?」
「ありがとー。きゅうこう…ね。兼続が用意してくれたんだもん。きっと理解出来るように書いてくれてるよ」
「「相手を追い詰めすぎるな」っ意味だよな」
「そう書いてある」

時折、湖が解らない文字を喜之介に聞き静かな時間が過ぎていく
だが、なかなか兼続の戻りが遅くなれば、喜之介はちらりと湖を見て

「なあ…」

気になっていたことを聞きたくなった

「なぁに?」

書物から目を反らさず答える湖

「お前の母親って…妖(あやかし)なのか?」
「そうだよ…かかさまは猫で妖…えっと、ここは…「おとしいれ」か…」

未だ目線は書物だ

「じゃあ、お前もそうなのか?」
「なにが?」
「妖なのか?」
「ちがうよ。湖は人…これ、むずかしい漢字多い」

んーーと眉をしかめる湖に、喜之介はすでに書物を文机に置き相手を見ている

「なら、おかしくないか?本当の親はどこだ?」
「……知らない。けど、かかさまは、かかさまだよ」

喜之介の言葉にどきりと跳ねる心臓
それを見せないように、書物を置くと喜之介の方を見る
喜之介は、文机に肘を乗せ湖を見ながら眉をしかめていた

「けど変だよ。お前の両親って…もしかして、あいつに…」

喜之介が湖に悪気が無いのは、その表情で解る
嫌な顔はしていない
でも、その言葉は暴言だ
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