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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


言った事は本当だ
衣服等、空気を吸うのと同じ感覚なのだが
真剣な表情で願う兼続に「問題ない」などと簡単に断ることはできない白粉
女中にしてもそうだ
自分におびえることなど一切無く、白粉に触れてきた

ずっと昔…普通の猫だったときの自分に触れるように

「…解った…だが、私はこれを一人では」
「もちろん!その事はお任せください。女中達に伝えておりまする!」

白粉が少しの無言のあとに、納得の返事をし兼続の表情はにこやかになる
結局、白粉が折れたのだ
この日から彼女が衣類を術でまとうのは少なくなった

部屋に運び混まれた白粉の着物は、湖の着物と一緒に仕舞われる

部屋にかかった着物
そして今着ている寝衣
人のものを身にまとった自分に、白粉は苦笑いをするのだった

「なんとも重たく感じるな」

その寝衣のままで信玄の部屋まで来た白粉
襖を開いてみれば、そこにいた幸村は頬を染め、信玄は一瞬目を開く

「なんだ?」
(なにかおかしいか?)

「おいおい…白粉、お前…その格好でここまで来たのか?」
「何か問題があるか?女中に着せられたのだ。変ではないだろう?」

白粉は、信玄の側で眠る湖の元に近づく

「変では無いがな…」

ふわりと、体にかかった着物は信玄の香の匂いがした

「なんだ?…別に寒くはないぞ?」
「そうじゃなくてな、ほらっ。幸村みたいな若い奴らには目に毒だからな」
「毒?」
「あ、あったり前だ。んな胸元出して歩いてんじゃねーよ!」

(胸元…)

ちらりと自分の袷を見れば、いつ着崩れたのか

「人の着物は…面倒だ」

眉をひそめてため息をつく白粉
すっと自分で袷を直す

「兼続の提案を受け入れたか…意外だな」
「…あんなに真剣に言われて無下にするのも悪いだろう…私は、此処に世話になる身だ」

信玄に羽織を返そうとすれば、

「着崩れもだけどな。女が寝衣のままで出歩くのはよした方がいい。歩くときには、羽織を着ておけ」

と、言われそのまま湖を抱いて部屋に戻った白粉
湖を下ろせばまた胸元が開く

(…面倒な…)

着物になれるまで、白粉は少しだけ不機嫌になった
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