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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


その頃、佐助の部屋では…


「なんだ…あんた、薬学の知識あるんでしょ…」

昨日は気づかなかったが、佐助の部屋に置かれている物を見ると、家康はそう言った

「忍びですから、少々の知識は持ち合わせています。ですが、家康さんのそれには足下にも及びません」
「…じゃあ、あんたにはこれ…解らないところがあれば、教えるから…まずは、それを読んで」

それは古い使い込んだ本だった
しかも手書きのように見える
この字は…

「この文字…家康さんの文字ですよね…」
「え、家康さま。本もかかれているの?」
「そうだけど、それは本じゃ無く…俺の書留帳」
「「え…っ」」

分厚いそれは、しっかり糸で括られ書物のようだ

「そ、そんな貴重な物を見られるなんて…っ」

佐助は感激のあまり言葉を失う
それを横から見た湖は、難しそうに眉をひそめた

それはそうだ。そこにはびっしりと文字が書かれているのだ

「あんたは、こっち」

ぴらりと、家康が出してきたのは紙に薬草が貼られたものだ

「あんなの読めないでしょ…湖のは、これから自分でつくればいい…」

さらりと、筆に墨をつけ書き示していく
ひらがなで、こどもでもわかりやすい文字で

「さんしょう」と

「さんしょう?さんしょうって、昨日家康さまがご飯に掛けてたやつ?」
「そう…」
「あれって、お薬だったの??」
「あれは、ただの調味料だけど…効能はあるよ。同じ物だからね」

続けて書かれたのは、
「煎じれば、胃をととのえ、腹の冷えをなす」
「湯に入れ浸かれば、冷え性、関節痛、腰痛、打ち身…に効果あり」

と書かれていくのだ

「…すごい…すごくわかりやすい!これ、家康さまのみたいに、たくさんになったら括ればいいの?」
「そうだね…あんた、一ヶ月しかないんじゃ大した量にはならないとおもうけど…」
「続けるよ。これ、わかりやすいし、面白そうだもん!」
「あっそ…」

筆を置けば、一枚の紙に乾燥された実と、緑色の葉
それに説明書きが加わるのだ

もちろん、子ども向けの簡単な内容になっているが、大人でも十分使えるものだ

「わぁぁ…湖のっ、ありがとう 家康さま!」
「…別に」

貰った一枚の紙を、とても嬉しそうに見る湖に苦笑してしまう家康
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