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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


湖は家康の言ったとおり、それからそう時間をかけずに目を覚ました

暖かい日差し、気持ちの良い体温、なぜか目元も暖かい

そして、いつもと違う香

うっすら視界が開けば、初めは白い光のような色を
少しだけ頭をうごかせば、目元の暖かいものが外れて明るい色が目に入る
つい最近、小さな女の子にもらった花のような黄色

「…ん」
(おひさまに匂いがあったら…こんな感じなのかな…)

「湖」

(知ってる声…)

「湖、起きて」

ぼぅっと、どこを見るわけでもなく上がった瞼
薄く開いた唇
九つらしからぬ雰囲気を作り出すのは、湖の香りのせいかも知れない

家康は、聞こえないようにため息をつくと、再度湖を呼んだ
すると、ようやくその目が自分を映したのだ

「いえ、やす…さま?」
「起きたら降りて」

(降りる…?)

きょろりと回りを見れば、此処は信玄の部屋の縁側だった
部屋の褥はもうない
仕舞われただろう そう湖にも解る

(なんで、家康さまに抱っこされてるんだろう?)

「??」

あれ?というような、きょとんとした顔をする湖を横に下ろすと、足を触れ始めた

「夜の痛みはどうだった?」
「いつもより、痛くなかった。楽だった…」
「そう。薬が合ってって良かった…今は?」
「今は大丈夫」

(あれ、…えっと…なんで?)

「じゃあ、立ってみて」

手を添えられ立ち上がれば、ぴりっと足首に痛みがさし顔をしかめる
すると、家康は「わかった」と言い、すぐに楽な姿勢で座らせられる湖

「家康さま?」
「…あんた、覚えてないんでしょ…朝起きて泣いたこと」
「泣いた?…湖が?」
「あんたが」

(泣いた…?朝…)

「あ…」

思い出したと、気まずそうに口元を覆えば…

「ごめんなさい」と小さく誤る湖に、家康はただ「別に」と言うだけだった

「着替えは、部屋にあるけど…着替えられるの?」

「心配無用だ」
「あ…っ、ととさま」

嬉しそうな湖の声
信玄の顔を見ただけで、湖はほっと息を吐いて喜ぶのだ
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