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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


「何をされている…?信玄殿の部屋…もしや、湖様になにかあったのか?!」

人だかりの奥から、兼続の声が聞こえた
そして人払いがされ兼続が部屋につく頃には、湖は家康の腕の中で寝入っているのだ

「幸村殿、一体どうされたのですか?!」

兼続の声を抑えるように、家康が「しっ…」と小さく言えば、兼続は口元を押さえながら幸村に状況を聞くのだ

「悪い。俺が来たときには、もう泣き始めてて…わかんねぇ」
「それでは、なぜ泣かれていたのかわからないではないですか」

「どうせ…」

家康の声に二人がそちらに顔を向ける

「湖の事だから、一人で起きて…余計なことばかり考えてたんでしょ…あの白粉の事とか…昨日、心配してたから…」

「白粉殿の…」

「口に出さないで溜め込むからね…この娘は…」

そう言い、日の当たる縁側に出ると柱に背を預け湖を抱えたまま座った家康
湖の頭は、くてんと家康の胸の方へと転がる

「…少し寝かせれば、起きるでしょ」

羽織で湖の身体を包むと、落ちないように支えて目を閉じた

「徳川殿…」


安土の武将は、誰もが湖の事ならお手の物だとでも言うように扱う
三成は、三歳の童を言い聞かせ
政宗は、湖好みの食事を
光秀は、六歳の湖を泣き止ませ
秀吉は、湖の行動を先読みしたかのような心配をしたと聞く
そして、再び
家康は、戸惑う幸村に代わって湖を簡単に泣き止ませた


(過ごした時間が違う…彼らを目の前にすると、実感せざる追えませんな…)

徐々に解ってきたとはいえ、まだ二ヶ月
以前、記憶を失った湖と過ごした時間を換算しても、四ヶ月
安土で湖が過ごした約一年には敵わない

兼続も幸村も、そう思わざる得なかった


(信玄様なら…簡単に泣き止ませたんだろうな…)

幸村は、家康に抱えられた湖を見て複雑な気持ちになっていた
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