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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


「これ…湖さんが飲んでいた…」
『樹液だ…嫌なら飲むな』

謙信は、それに口をつけ「甘いな」と言った

『何の用があってここまで来たかは教えられんが…愚かな娘だ。不調だと解っているのに、そのまま帰ろうとしたのでな。儂がここへ連れてきた』

(…用だと)

『そこには触れてやるな。お前に悪いとは思っていたようだぞ』

謙信は今一度、丸まっている白猫を見た

「桜様、白粉さんの迎えを」
『入らぬ世話だ。白粉ならツグミたちにでも運ばせる』

そう言われ先ほどの鳥を思い出すが、猫の何倍も小さい身体だ
疑問に思った佐助の思考もすべて読んだのだろう

『儂らをお前達の常識内で考えるな。問題ない、三日後に送り返すから心配するな』
「…はい」

こくりと、喉を鳴らしながら飲み物を飲む佐助の額に

『どれ。少し見せろ』

と、登竜桜の指があたる

「あ」

瞼を一瞬だけ閉じた登竜桜
そして、ふっと口元を緩めて笑い出した

『くくっあの娘…戦の仕組とはな…本当に面白い』

指が離れれば、佐助は登竜桜に記憶を読まれたことに気づく

「…あの猫を生かす方法はないのか」

笑っていた登竜桜の声が消える
消したのは謙信だ

『…なぜ必要だ』
「あれは、湖の母親だ。期限付きだとしても…」
(ほとほと湖に甘いな…妖だとて湖が母と慕う者…存在がなくなれば、湖はどうなる…)
「謙信様…」

登竜桜は、ふぅと軽く息を吐くと

『できるか、できないかで言えば…』







登竜桜の元を出た時には、空はうっすら明けてきていた
城の女中達は、そろそろ起き出して仕事を始めるだろう時刻だ

「長居したか…」
「あそこは、時の経過が感じにくいですからね」

馬を走らせる二人

「意外でした」
「……」
「白粉さんのこと…謙信様が、そんな風に考えていただなんて」

(全くだ…自分でも不思議に思う)

「それと、桜様の話も…」










『可能だ。ただし、ただの猫か、人かでな』

登竜桜は そう言った
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