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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


ごっくん…

そう喉が音を鳴らせば、家康もその手を離して「よし…」と道具をしまい始める

「に、にがいっ!!」
「良薬苦しっていうよ、湖さん」
「でも、にがいよっ兄さま」

べーと、舌を出す湖に佐助が苦笑いして見せていれば、差し出された手

「あ…」

そこに乗っているのは、湖の好物 金平糖だ

「こんぺいとう!!」
「あ…っ」

佐助が止める暇もなく
その手を自分の口元に運ぶと、金平糖を舌で攫って行く

(まさかと思ったけど…)

家康はいつぞやの湖を思い出していた
「良薬苦し」その通り、以前湖は家康の薬で「苦い、苦い」と騒いだ事があった
その時には、三成の手からそのまま金平糖を食べたんだが

(この娘(こ)は、大きくても、小さくても変わりない)

カリカリ

金平糖を歯で砕きながら、にこにこと喜ぶ湖
自分の口角が上がるのに気づいた家康は、湖が掴む手とは反対の手で自分の口元を覆う

(…可笑しいっ)

「…湖さん」

一連の様子を見ていた佐助は「今のは見てない…見なかったことにしよう」とため息交じりで言うのだ

「っ、ぷ」
「…ぷ?」

未だ手を持たれている家康
彼は後ろを振り向いて、肩を震わせる

「家康さま?」
「家康さん…?」

呼べど家康は返事もせずに、状態が変らないのだ
佐助と湖は顔を合わせ、もう一度家康の方を見た

「…耳、真っ赤…」

湖がぽつりと言う

確かに家康の耳の後ろが赤い

「もしかして…わらってる?」

湖がそう言うと…

ぐっと咳き込むような音が家康からするのだ

「わらってるね?兄さま」
「あぁ…なんか、貴重なものを見ている気分だよ」
「家康さまも、笑うんだね」

「…あんたたちは、俺を何だと思ってるの?」

顔を見合うと、家康の表情は見たことないくらいに柔らかく見えるのだ
驚いたのは佐助、湖は「わぁ」と小さく声を上げると…

「家康さま、笑うとすごくきれいねっ!」

そう言いながら手を叩くのだ

今度驚いたのは家康

「…何を言いだすんだか…」

一息はき出せば、そこにあるのはいつもの家康の顔
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