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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


家康と目が合えば、湖は気まずい顔をした

「でも、桜さまも悪いものじゃ無いからって言ってたし…「痛い」っ言ったら…」
「…なに?」
「…かかさまや、みんなが心配するから…」

はぁーと、再度聞こえるため息に「…だめなの?」と小さく聞こえた声

「湖さん、痛ければ痛いって言わないと。それはそれで、心配だよ」
「兄さま」

佐助と湖の話を耳に入れながら、薬箱から薬草を出していく
茶器のような物を出せば、かちゃんと音をたてる

「確かに、それは病気じゃ無い。でも、それならそれで和らげる薬もあるんだよ…あんたが訴えなきゃ対処もできない…我慢するのは良いときもあるけど、返って心配を煽る場合もある…」
「家康さま、それってむずかしいよ。良いときもあれば、悪いときもあるみたい…」
「そう言ってる…でも、あんたはまだこどもだから、ちゃんと大人に伝えなきゃだめだ…」

寝転がったまま家康の方に顔を向けた湖
そんな湖を視界にいれながら家康は、ごりごりと薬草を煎じ急須へ入れていく
その手を見ながら、家康の話に耳を傾ける湖

部屋はだんだんと薄暗くなってくる
佐助は懐から火打ちを出し部屋の明かりを灯す

ぽぅっと小さな明かりが灯れば、少しだけ部屋が明るくなった

ごりごり…

先ほどとは別の薬草

「…家康さまは、お医師さまなの?」
「…これは、必要で身につけた知識。俺は医師じゃない」
「そっか…勉強した分、その知識が形になるんだ…家康さま、すごいね」
「別に…」

ごりごり…

沈黙の間に聞こえるのは、家康の薬を煎じる音だけ

やがて薬湯ができると湖を座らせ、煎じた薬湯を渡す

「飲んで。痛みが和らぐから」

緑黒い薬湯に、眉をしかめる湖は、

「…くさい」
「湖さん。文句言わない」
「苦そう…」
「湖さん」

薬湯を見るだけで飲もうとしない
そんな湖を、佐助は隣で優しく促すが…家康は違う

「…貸して」

有無も言わさず湖から薬湯を奪えば、彼女の鼻をつまみ上を向かせるのだ

「っひゃ…?!いいやふ…っんっんん“――!」
「わりと強引な…」

口が開けば、そのまま薬湯を流し込む
その様子に佐助も驚くが、一番驚いているのは湖だ
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