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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


そうして夕刻、湖の部屋を訪れたのは家康だ
後ろには佐助の姿もあった

部屋には今日仕立て上がった着物がいくつか掛けられている
薄緑、桃色、朱色…どれも湖に似合う色ばかり

じっと部屋を見たあと部屋の主を見てみれば…

「佐助っていったね…寝てるんだけど、これ」
「これって…湖さんのことですか?」

あとから来た佐助が中を覗けば、部屋の真ん中ですーすーと寝息をたてて眠る湖の姿がある

今日は暖かい一日だった
日差しの温もりで寝入ってしまったんだろう
側には一冊書物が置いてあった

「このまま寝るなら薬を飲ませる必要も無いけど…最近、この子の活動時間はどうなってるの」

はぁ…と息を着きながら、薬箱を畳に起き湖を見下ろす家康

「湖さん、九つになってからは特に昼寝はしていないはずなんですが…」
「…これじゃないの…」

置いた薬箱の代わりに側に置かれた書物を持つ家康
ぱらぱらとめくれば、びっしり書かれた年表帳なのだ

「湖は、何をはじめたの」
「あぁ…これは、あれだ…いい睡眠本になってしまったわけか…」

本を預かった佐助は、それを湖の文机に置くと「戦について学びたい」という湖の話を聞かせた

「…ばかじゃないの」

そうはいうものも、本当に馬鹿にしているわけではない家康
そんな彼の様子に佐助も気づき

「湖さんらしい…と思います」

と、そう言ったのだ

日が沈みだし、部屋が暗くなってくる
当然のように空気も涼しくなり、寝返りを打つ湖
すると、

「っ、いた…っ」

下肢がびくりと反応し、湖がうっすら目を開けたのだ

「湖さん、起きた?」
「…にぃさま…」

視界に入るのは二人
佐助と家康の姿だ

「…家康さま…?あれ…つっ」

起き上がろうとすれば、足が痛むのか顔をしかめる湖
その様子に家康が膝をつき、湖の足を着物の上から触れる

「触るよ」
「え?え…うん」

触れていけば、痛みが走る部分は顔をしかめる

(細い足…)

湖に一通り触診した家康がため息をつく

「あんた…痛いなら痛いっていいなよ」
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