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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


ぺこりと下げられる頭

「客じゃねーし…」

湖の言葉に、幸村がぼそりと言えば…湖はむっとした顔をして幸村に「幸、だめっ!」と怒ってみせるのだ
そんな彼女の着物は、涼しそうな赤い麻生地、絞り模様に桜の花が散っている
そして柔らかそうな白地の帯

「貴様歩けないと聞いたが、立つ事もできんのか?」

信長にそう言われて、一瞬自分の事なのか?と間を空けた湖だったが「え、あ。立つだけなら…」と立ち上がろうとする

「湖、無理するな」
「大丈夫、ととさま。痛いけど、日中は割と平気なの。夕方くらいからすごく痛くなるんだけど…少し慣れてきたんだよ」

信玄に手を添えられ立ち上がった湖を見れば、本当に伸びた身長

「やはり、九つよりは上に見えるか」
「みんなそうゆうの。私も視界が高くなってびっくりした」

あははっと笑うと、少しぐらつく体

「あんた、もう座りなよ…」

ぼそりと言う家康に、湖は座りながら尋ねる

「家康さまは、もしかして…人見知りなの?」
「…はぁ?別に人見知りなわけじゃない…俺は元からこうゆう話し方なだけ」
「どうしてつんつんしてるの?なんか嫌なことあったみたいな顔だね?あ、もしかして、こども嫌い…それとも、」
「…黙って」

思っていることを、どんどん声に出す湖を見て信長が笑う

「…確かに外見は成長したが、中身は童のままのようだな」
「…満足か」
「あぁ。今はな」

謙信に返事をしながら立ち上がった信長に湖は驚く

「信長さま…帰るの?」
「なんだ?…寂しければ、ここから連れ出してやろうか?」

幸村がそれにいち早く反応し、湖の前に出た

「…ふ…冗談だ。言ったはずだ、成長するまで此処に置くと」
「ご用事があって来たの?」

首を傾げる湖を見ると「あぁ。用は済んだ」と微笑むのだ
その笑みは少しだけ光秀のものと似て見えた

「…俺は少し残ります。痛みを和らげる事はできるので」
「そうしてやれ」

そう言い、家康だけを残して去って行く信長は、まるで過ぎていく台風のようだ
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