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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


「口は達者だな」
「…は?それはそっちでしょ」

こちらも決して触れてはいけない不穏さだ
謙信は部屋に入るなり、置いてあった酒を飲み始め息を着いた

「…旨くない」
「ならば安土の酒を届けてやる」
「…入らぬ世話だ。貴様達が居なくなればいいだけだ」
「そう嫌うな。今は同盟を結んでいるだろう」
「……」

信長も三人のいる部屋に入ると、互いに向かい合うように謙信の前に座った
謙信、信玄が部屋の奥に、信長、家康が襖の方に
上座は空席のままで

(これじゃまるで…)

信長は礼節を示しているのだ
意外だった

(この男が…ここまで態度で示すなど…思ってもみなかった)

「…今回は、なんのようだ」

謙信もそう思っているのだろう
信長に自分から尋ねたのだ

「湖がずいぶんと成長したと聞いてな、見に来ただけだ。一目見れば、このまま引き返す。国境の村で川の氾濫があったからな、手をつけねばならん」
「信長様、それは俺がやると…」
「家康、貴様は此処に残れと言ったはずだ。湖の主治医としてな」
「主治医だと…?」

信玄が家康を見れば、家康は居心地悪い表情を隠そうともせずに言うのだ

「湖の様子を見てから…留まるかどうかを決めます」

程なくして外から声がかかる

「失礼します、謙信様」
「入れ」

そうして顔を見せたのは、佐助に抱えられた湖と幸村、白粉と兼続だ
その身体の大きさに信長も家康も一瞬驚く

「ほぅ…」
「湖…」

抱えられていても解るほど違うのだ
すっと伸びた手足、ふっくらした頬が愛らしかった輪郭はすっと大人の顔立ちへと成長しており、少しだけ緊張を見せる表情は大人の湖も見せていた物と同じだった

信玄の横に湖を下ろし、その横に幸村
後ろに佐助、白粉、兼続と座る

「秀吉から聞いてはいたが、九つとは思えないほどの成長ぶりだな」
「その背の伸びようじゃ、身体が痛むだろうね」

湖を目の前にし、信長と家康がそれぞれ声を出した

「えっと…いらっしゃいませ。信長さま、家康さま」
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