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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


「滞在日数など書かれているんですか?」
「織田信長は、すぐに引き返す…国境添えに豊臣秀吉の迎えがいるようだ。徳川家康については特に書かれていない」

手紙を佐助に渡せば、佐助はそれにざっと目を通して「そうですね…」と小さく口ずさむ

「失礼致しますっ、謙信様」

慌てた様子の家臣が襖の外から声をかけた

(来たか…)
「広間で待たせろ」
「…っ、はっ」

家臣が下がれば、謙信は立ち上がって信玄を見る

「行くか…?」
「付き合おう…仮にも娘の事だからな」
「そうか…佐助、幸村。お前達は、湖と共にあとから来い」
「承知しました」「…わかった」





広間までの歩み

いつもと異なる城内の空気
ここ最近、三成、政宗、秀吉、光秀と安土の武将達が城に入ったが、此処までのはっきりとした ものものしさは無かった
やはり信長 本人となれば違うのだろう

広間に近づけば、家臣の一人が複雑そうな面持ちでいるのに気づき、謙信は口を開く

そちらを向いてではない
歩みも止めない
本当に通りすがりではあるが…

「何を思う…普段段通りに政務をこなせ」

そう城主から声がかかる

たったそれだけで、ものものしい空気はどこかへ消えていくのだ

目を合わせたわけでもない
たったそれだけで

(さすがだな…)

信玄は、それを見て謙信の圧倒的な存在感に感嘆するのだ

(信長、あいつもやり過ぎなければ…政務、国の動かし方、すべてに関心するところがある。あの男から魅力を感じることがある…だが、あいつは目的の為に手段を選ばない…)

己の信念の為に、人も信仰も神もすべてを手に納める
そのやり方だけは、理解しがたいのだ

広間の廊下にさしかかった時、意外な場所でその男の姿を捕らえた
部屋の中では無く、縁側に座って居るのだ
家康が見えないところをみれば、彼は部屋の中にいるのだろう

(てっきり上座にどかりと座り込んでいると思ったんだがな…)

「湖はどうした」
「…第一声がそれか」


空気が一瞬で凍る


「湖ならあとで来るだろう。安土の領主がぬけぬけとこんなところまで…暇なもんだな」
「…国を持たない奴に言われる筋はないね…」

部屋から聞こえた声

広間を見れば、家康が信玄に睨みをきかせるのだ
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