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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


次の朝…聞こえてくるのは、白粉の声ではない

「湖…」

(まだ…眠い…よ)

「湖さ…」

(だ、れ…)
「ん…」

ゆるりと頭を上げれば、自分の髪の毛で視界が遮られる
昨夜、鈴と入れ替わってのはなんとなく覚えがあった湖

(もどってる…)

自分が人に、湖に戻っていることが解る

(なんか寒いと、おもった…)

すると自然と肌寒さに襲われ、目の前にあった物にすりつこうとするのだが…

「ちょっっ!ストップ!!湖さん!起きて!」

(あれ…この声…)

「にぃさま?」

もう一度顔を上げれば、正面にいるのは佐助
眼鏡を外しているのでいつもと違う顔に見えるが…

「にぃさま、めがねはぁ?」

寝ぼけまなこの湖は、くぁっとあくびをしながら佐助の胸に顔を置いた

「っ…こんな状況で眼鏡出来るわけないです…とにかく…降りなさい」
「んーー…まだねむいよー」
「眠いならせめて寝衣を着てください…俺は触れないから、まず降りる」
「なんで?いつもだっこしてるっよー」

寝起きの湖は舌が回っていないのか、まるで六歳の時の口調だ
時刻はまだ夜明け前
夜明け前に起こされれば、まだ幼子
目も覚めないだろう
だが、佐助にとってはそれどころでは無いのだ
朝方、小さな気配を感じ鈴だと解った
だが、殺気も悪意もないその気配についそのまま寝てしまった自分が悪かった

(まさか…こんな事なら、あの時無理矢理目を覚ませば良かった…)

自分の腹の上で丸まって寝始めた鈴
小さな暖かみと重みがちょうど心地良いと、深く眠りにつくと同時に
その温かさが全身に広がって羽織が重く感じ始めたのだ

(寝るときは此処には来なくなったから油断してた…)

どうしても人の上が安心するようで、鈴にせよ、湖にせよ、腹の上で眠るのが好きなようだった
三歳の頃、この癖を知っていた白粉や佐助は寝入った湖を横にすぐに下ろしていた
最終的に二人はもうあきらめてそのままにさせていたが、六つになってから佐助は毎度毎度きっちり横に寝かせた
結果、湖は眠るときに佐助の上に乗ることはなくなったのだ
代わりに犠牲になったのが、信玄だ
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