• テキストサイズ

【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


程なくし、日が沈む頃に城に着いた三人
謙信は到着後すぐに自室へ
佐助に抱えられている湖の手の中には反物があった
その他は女中が部屋に持っていってくれる

湖は、反物に夢中で自分が思い浮かんだ疑問の事などどこかに行ってしまっていた
白粉のところへ運ばれれば、そこには兼続もいた

「じゃあ、俺は少し仕事にいってくるね」
「うん、兄さま。気をつけてね」

下ろされると同時に、今日見たこと、あったことをすべて話して聞かせ
対する白粉は、相づちをうってすべて聞くのだ
そして決まってこう言う

「湖、楽しかったか?」
「うん!とっても!」

そんな時の白粉の顔はとても

(母者の顔…いや、幸せそうな表情をされる…)

側で見ていた兼続はそう思っていた
ふっと頬を緩めると、湖の手にある反物に手を伸ばす

「湖様、それではこちらをお着物に仕立てましょう。明日、仕立屋を呼びまするが、よろしいですか?」
「うん!あ。でも、少し背が高くなっても着れるようにしてほしい」
「それは…一ヶ月後の事を仰せでしょうか?」
「そうだな…お前の身長の伸びは、この後穏やかになりそうだから…少し大きめならば、次も着れるだろうな」

白粉が湖の背の事を言う

(確かに…湖様は、ほぼ大人と同じような背丈になられている…)
「それでは、そのように致しましょう」
「頼む」

反物を受け取り、両者を見ればクスクスと楽しそうに笑い合っているのだ
兼続もつられて笑ってしまう

「さて…夕餉までの間…」
「あ。湖ね。ととさまにも、教えたい!ととさま、帰ってきてる?」
「信玄か?」
「信玄様であれば、まだお帰りになっておりませんよ」
「かかさま」

「待て」と白粉が部屋を出て黙る
すると間もなく…

「近くまで来ている。もうそろそろ戻るだろうよ」

と、湖に答えた
白粉は猫、妖の為、嗅覚と聴力が特にきくのだと言う

「いいなー。かかさまのそれ、湖は出来ないの?」
「お前は人だからな」

つきん…そんな音を立てるように、何かが胸に刺さる

(…あれ…)

「湖様、いかがされましたか?」
「…ううん…なんでもない」

へらっと笑って兼続に見せる湖

(なんだろ…なんか…)
/ 1197ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp