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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


謙信の言葉に睨みを返す武士達

信長との協定後、ちょこちょこと上杉に手を出してきていた北条
初めは無謀にも謙信に直接手を出してきた、それが国境周辺の土地に、民に…
自分に降りかかっただけならば遊ばせておいても良かったが、国に侵害してくるとなればそれは別だ

「今、戦を起こす気はまだ無い。だが、これ以上何かあれば即刻兵を挙げ叩潰しに行くとしよう」

冷たく振り刺さるような殺気、重く温度の無い声色に三人は顔色を変えた

「謙信様…」
「このまま帰せ。忠告はした」

謙信の言葉に佐助は小刀を納める
そして、少し離れた茶屋に引き返していった






食事を取りながら、ずっと入り口ばかり気にしている湖の目に、待っていた人物はちゃんと映った

「謙信さま!兄さま!」

カタンっと、箸を置く音と共に聞こえたのは嬉しいという気持ちを隠さない声色

「亭主、助かった」

謙信は、そう声をかけ湖の元に
佐助もまた「湖さん、お待たせ」と湖の元へ
そして、二人は湖のお膳を見て驚くのだ

「湖さん、それ全部食べたの?」
「うん?あ…うん。兄さま達のこと、ずっと考えてて。あんまりご飯の事気にしてなかったんだけど…私、けっこう食べたみたい」

お盆にのった小皿は、ほぼどれも空になっていた
その皿を見ればどれも少量だろうと解るが、それにしても今朝の食事量から見て、湖の食べた量は意外なものだった

「妹さんの場合、たくさんの種類を少量出してあげた方がよく食べられると思いますよ」

佐助を見て、そう言ったのは亭主だ

「あ。おじさんの奥さんが、食が細いんだって。私と似てるからって出してくれて…おじさん、あの…美味しかったです」
「いいんですよ、お嬢さん。食事どころでは無かったようですから」

事実を指摘され、湖は真っ赤になった
確かに味はちっとも感じていない
それどころか自分が何を食べたのかさえよく解ってない
はははっと笑いながらも、お盆を見て「でも、それだけ食べれていれば十分だ」と笑う亭主

「そうか…」

謙信も感心したようにそれを見て、亭主に多めの食事代を渡した
驚いた亭主に無表情のまま「これが世話になった礼だ」と湖の頭を軽く叩けば、亭主も「そういう事なら」とそのまま礼を貰うのだった
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