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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


身体が大きくなった湖
いくら白粉が長身で大人だからと言って、今の自分を抱えて歩くのは重いだろうと思っても、白粉はそのままで良いと言うのだ

「白粉が疲れたら俺が代わる。気にするな、湖」
「だ、そうだ」

信玄と白粉、双方に言われればそうせざる得ない

「…わかった」

仕方ないと、クスッと笑う仕草
九つの湖は時折大人びた表情を浮かべる

「湖…お前、ちゃんと両親の言うことを聞いて危ないことをするなよ」

その声は、後ろからかかった
振り向いたのは湖だけではない
信玄も、白粉も、佐助もだ
声の主は秀吉だ

「秀吉さま?」
「いいか。今、お前の一番身近にいる奴の言うことをちゃんと聞くんだぞ。なにかあれば、誰かに絶対相談しろよ」
「…秀吉さ…」
「それから、知らない奴に声をかけられても答えるなよ。ついうっかり答えて何かあっては不味いからな…鈴には意図的に変れるんだったな…なら、羽織をよく行く部屋に置いて…」
「っぷ…」

「ん?」と湖の方を見れば、小刻みに震える肩
下を向いて耳まで赤くなっているのだ

「湖?」
「ひ、秀吉さま…っ、心配性っ」

目元に涙を浮かべながら笑う湖に、秀吉は近づき「心配で何が悪い」と湖の顔を間近に見る
そうすれば、湖は肩を震わすのを止め、優しい笑みを浮かべると

「なんか…秀吉さま、湖の兄さまみたいね?」

と良いながら「解った。ちゃんと気をつけるよ」と言うのだ
「兄」その言葉は、秀吉にストンと落ちてくる

(そうだ…湖は、俺にとってかわいい妹…そんなかけがえのない存在だ…)

「そうか…では、「兄」役に名乗りを上げよう」
「え?秀吉さまが…ということは、俺も豊臣秀吉の義弟に…いや、それ以前に義父は信玄様で…」

真顔で考え始めた佐助に信玄が苦言する

「おいおい、冗談はよせ」

秀吉のそれに、湖は驚き、信玄は嫌な顔を見せる
信玄を視界には入れず、秀吉はそのまま湖に伝えた

「心配性な兄をたまには思い出して、危ないことはしないように気をつけてくれ」
「…ちゃんと覚えたよ。秀吉さまも光秀さまの事も。もう忘れないから、大丈夫」
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