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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


「湖、お前はまだそんなこと覚えなくて良いぞ」
「ととさま。そんなって…なぁに?」
「酒を注ぐなんぞ、子どもには不要だ」
「そうなの?」
「そうだ。こどもは、こどもらしくしていればいい」

信玄にそう言われると、湖は素直に「うん」と頷く

「じゃあ、ととさま」
「なんだ?」
「ふふっ…だっこして」

自分に向かってまっすぐ両手を伸ばす湖
その手はか細く少し力を加えれば折れそうな程だ
一瞬驚きの表情を浮かべるも、すぐに優しい笑みを浮かべ

「よぉし。どのくらい大きくなったか、確認させてみろ。湖」

そう言い、謙信の膝の上にいた湖を抱き上げるのだ

「わぁ…ととさまに抱き上げられると、すごく高く感じる!」
「おいおい…お前、ほんとに…どうしてそんなにガリガリなんだ…」

側にいた幸村が、湖の腕を見て声を上げれば
佐助もまた同じだ

「全く同意見。湖さん、食を増やして少し体重をつけないと」
「兄さままで。なんで、みんな太れって言うの?」
「太れではなく、標準体型にと。風にだって飛ばされそうで、怖いんだよ。今の湖さん見ていると」
「貧相なガリ猫だもんな…」
「…幸が意地悪言う…」

そんな様子をじっと見ているのは、秀吉と光秀だった
抱き上げられ嬉しそうにしている様子に、内心は複雑な気持ちになる

「確かに、湖…お前、やはり少し太る必要があるな」
「えー。別にいいよ。それに、軽い方がととさまも楽でしょ?」
「何がだ?」
「お約束忘れたの?ととさま、湖のお布団だもん」

湖がにこやかにそう言った時、場の空気が冷え、何を感じ取ったのか登竜桜が笑い出した
酒を吹出し、其れは面白そうに

そうして時間は流れ…

『この安土の酒も気に入った。次も持ってこい』

そう言われ登竜桜と一時の別れを告げた湖達は、飯山城へと戻っていく

「ね、かかさま。鈴になろうか?運びやすいでしょ?」
「いや。いい、そのままで」

白粉は、湖を抱えて歩いているのだ
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