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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


湖の髪を一房撫でるように指を滑らせながら、言葉を続ける登竜桜

『約束を守れない者は、信用されなくなる。私は意地悪く回数を決めてはいない。お前の事、お前のととさまの事を踏まえて三度までだと言った。今のお前なら理解できるな?』
「…はい…わかります…」
『なら、いい』

そう言うと、先ほどの白粉同様、湖の頭を軽く撫でてやる

「ごめんなさい…」

そうか細く聞こえる声に、『これから守ればいい』と優しく返すのだ

『三度まで。これは変らない。使いすぎれば、せっかく整えているお前と鈴との調整が不完全な物になる…最悪、どちらかが消える事にもなりかねない。いいな』
「うん…わかった…私、ちゃんと解ったから」
『…そうだな』





遠くにいる武将たちには声まで届かない
だが、その雰囲気が和らぐのは感じられていた
遠目で見ていれば、四人はこちらへと戻ってくる

「湖は何で白粉に抱えられてるんだ?」
「…おそらく、佐助と同じだろうな…成長痛ってやつだろう」
「成長痛?」

秀吉の疑問に、信玄が答えた

「じゃじゃ馬が大人しくなるのか…想像つかない…」

そんな信玄の横で幸村が眉をしかめている

「じゃじゃ馬じゃないもの。幸、いじわるばっかり言う」

幸村の声が聞こえていた湖が答えた
その口調は大人の湖にかなり近づいているものだった

「湖」

謙信に呼ばれて返事をすると、湖は敷物に下ろされた
同時に眉をしかめる
身体の節々が痛むのだと言えば、佐助が「同じ状態でしたので、心配いりません」と湖を支えるように横に座るのだ

「どうにか出来ないのか」
『何でも出来るわけではない。一ヶ月だけのことだ。それに、三日もすれば少しはなれるだろう』

登竜桜も座ると酒を飲み始める
代わりに謙信が立ち上がると、湖の脇に手を差し入れその身体を持ち上げる

「謙信…さま?」

きょとんとした表情の湖

体重をすべて支えてやって立たせてみれば、背丈は大人の湖より少し低いくらい
身体の薄さは相変わらず、背に合わない重さ
だが、伸びた髪の毛のせいか
九つには見えない大人びた顔立ちに見える

(軽いな…)
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