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【イケメン戦国】私と猫と

第6章 おつかい (裏:三成、光秀)


引っ張られている袖を一べつしてから、光秀は小さくため息をこぼした

「なんだ…」
「…っあの、今日は助けてくれてありがとうございました」

光秀の袖をキュっと握り、湖は勢いよく礼を言った

「あの時…光秀さんが来てくれなかったら、私…」

そこで言葉に詰まって、下を向いてしまう
光秀は出ようとしていた襖を閉じ、湖に向き直った

「あそこで助けが来なければ、どうなっていた?」

ピクリと肩が上がる

「…謙信さまに…連れて行かれたと思います…」

光秀の着物から手を離し、小声で答える湖を見ながら光秀は思っていた

(…あそこで出ていくのは今後の動きを読むならまずかった…秀吉や光成を待つべきだったかも知れない…湖を渡して、上杉の懐に入りやすくなることもできたかも知れない…)

「…どうして、助けを求めない?」
「え…?」

(だか…この娘は、助けを求めない…相手に静止を願っても、他者に助けを求めない…そんな者を上杉の手に渡せば、どんな事をされるか…)

湖は言われていることが解らず、首を傾げていた

「上杉に連れ去られた際、通り過ぎる者は居なかったか?長屋であれば、助けを叫べば誰か来るとは思わなかったか?」
「あ…でも…謙信さまは…何かあれば、誰でも殺してしまいそうで…」
「お前とて一緒だろう?いつ斬られてもおかしくない」

身体を強張らせる湖を見ながら、その手を引き再度褥へと導く

(…少々、情が移っているのか知れないな…)
「…見せてみろ」
「…え?」
「どこを痛めた?」

言われたことを理解すると、湖は赤くなって寝衣の前を掴む
今日は、雲のない満月
明かりのない部屋でも、その表情は解る
光秀は、湖を座らせると自分も片膝を付きその襟に手を掛ける

「だ、だめですっ」

湖は拒否をしめし、襟元を抑えるが少しあいたそこから線のような傷が見える
白い肌に不釣り合いな浮かんだ傷

(…もう少し…早く出れば、こんな傷つけずに済んだか…)

光秀はその一点を見ている
その視線に気づき湖は、そこを手で隠した

「…悪かったな…」
「…え」
「もう少し早く行くべきだった…」

光秀の表情に影がかかったように見えた

「光秀…さん…?」
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