第1章 タイムスリップ
一人風呂に浸かった湖は、「ふぅー」と大きく息を吐き考えていた
(どう考えても現代じゃない…昔、江戸時代とか戦国時代って感じだよね)
ぴちゃんという、水の音を聴きながら目を閉じ昨夜から今までの事を思い出す
(タイムスリップした…て事はなのよね?湖からお城まで相当な距離だった。大がかりなドッキリを仕掛けられたとしても無理がある)
「はぁ…」
(もうひとつ…鈴ね。私が鈴になったり…タイムスリップの影響で二つが一つになちゃった…って感じかしら…)
「よく解んないよ…」
「何がだ?」
「私が鈴に変わる理由と、タイムスリップした此処がどこなのかが」
「ここは信長様の城、安土城だ。たいむすりっぷ…?というのはなんだ?」
「タイム…?ん!?」
勢いよく振りかえると、さきほど見た眼帯の男がそこにいた
「きゃっ?!や…!」
逃げようとするも手首を捕まれ、反対の手で身を隠し湯船に深く沈むしか出来なくなった
「出てって!」
「政宗」
「はい?!」
「俺の名前、政宗。そう呼べ」
にっと、少年のようにでも意地悪そうな笑いを浮かべ政宗は言った
「お前、名は?」
「湖!解ったら、出てってください」
「湖か…で、湖。お前はもののけの類いか?」
するりと刀が抜かれ首筋に当てられる
「?!…違います!原因は解らないけど、鈴…友人から預かってる猫と一緒に事故に合って時を越えたの!気づいたら私と鈴が一体化してて…私だって…よく解んないに…」
最初は威勢よく答えた声が、刀を向けられていることも忘れたように下を向き唇を噛みながら声を出していた
チャキ…と刀を返す音が聞こえ、政宗は鞘に刀を納める
「…解った。理解はできないが、嘘はついてないと解った」
「…政宗…様?」
「政宗でいい、湖また後でな」
そう言い政宗は風呂を出ていった
湖はブクブクと水の中で息を吐き、昨夜から一体何人に何度裸を見られたのかと泣きそうになった
その後、風呂から上がるも着替えに置いてあった着物の着方が解らず女中に手伝って貰いなんとか着替えられた