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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


そう言うと白粉は、佐助の馬から飛び降り人型に変化する
それを目の前で見た高梨が小さな悲鳴を上げるが、そんなものはお構いなしに今度は鈴を起こそうと抱き上げた

「湖に戻すか」

白粉の手には、くたんっと寝たままの子猫
すっかり安心しきっているのは、白粉だと解っているからだろう

「白粉、鈴はそのままにしておくといい」
「…?」

信玄にそれを止められた白粉は、なぜだという表情を浮かべる

「わざわざ高梨候に見せる必要も無いだろう…」

それは、湖の素肌を…という意味だと、他の武将たちは直ぐにわかるが

「そうゆうものなのか?」

猫の白粉にはいまいちピンとは来ない

「そうゆうものなんだ」
「そうか」

信玄に諭され、白粉は鈴を起こさないように抱えた

「み、皆様の馬をお預かりしておきます。酒は、此処に…儂は…私は、今回ご遠慮させて頂きたく…っ」

前回、終始顔色を悪くしていた高梨
心なしかやつれた様にも見える

「酒が用意出来ていれば構わん。すぐに出る」

謙信は馬を下りるとその手綱を引き渡し、高梨に声をかけた
それに高梨は、あからさまに安堵の表情を見せた

「しょ、承知致しました」

ここからは徒歩だ
さほど遠くない森の中、前回のような禍々しい気配は感じないものの

「此処に来ると、空気が変るな…」
「なかなか無い感覚だ」

荷車を引く秀吉の横を光秀が歩く
その後ろでは、同じく荷車を押す佐助と幸村

「おい、明智。お前、側を歩くなら手伝え」

幸村が後ろからそう言えば、「悪いが俺はけが人だ」と自分の肩を叩くのだ
その傷はすっかり癒えているにもかかわらず

先頭を歩くのは、鈴を抱えた白粉
その後ろに二人、信玄と謙信が着いていく

「もうすぐだ」

立ち止まったのは、やはりあの場所
景色はただの森
だが、この場所の空気は…気配は、明らかに違いがある

荷車が止まるとすぐに音が響いた




パンパンッ




良く響く手を打つ音


暖かな空気、桜の香り、柔らかな光…景色が一変する


白粉の手の中の重みが変わる

ふふっと頬笑みが漏れると、そんな白粉の正面で湖を除き混む女がいた

『よく寝ていたな、湖』
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