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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


それでも、頭をすりつけてくる鈴の額を舐めてやれば、鈴は甘えるように鳴くのだ
二匹はやがて重なるように丸くなって寝に入った

「寝たのか?」
「寝たね」

幸村が横から覗き混めば、佐助は二匹が落ちないように片手を添えて様子を見た

「お前は大丈夫なのか?」
「あぁ。この一月思いの外動かない身体に不便したけど、部屋から出ないおかげで実験が出来た。これはこれで良かったと思うよ」
「…じゃなくて、身体のことだ」
「成長痛のことか…いや、痛いけど…もう慣れた。日常生活にはなんら支障ない」

狭い通り道、
謙信と信玄を先頭にし、間に幸村と佐助の馬、後ろに光秀と秀吉が連れ立って進んだ

「それより、この人数で桜様は快く思ってくれるか…」

佐助がぼやけば、後ろから声がかかる

「その心配ならあるまい。安土から酒を持ってきたからな」

秀吉だ
事実、秀吉の馬には両脇に酒坪がかかっていた
先ほどから、ちゃぽんと水音もしている

「秀吉さん…さっきから気になっていたんですが…横見てますか?」
「なにがだ?」

ふっと秀吉が横に顔を向ければ、そこには涼しい顔を水を飲む光秀の姿がある

「光秀がどうか…おい、光秀。お前…それ、何飲んでるんだ…」

光秀が片手に持っていたのは、いつくすねたのか…秀吉が用意した酒の一つだ
片手で持てるほどの酒壺の大きさ

「同じ物がまだあるだろ?あそこまで行くのは長い。少しくらい支障…秀吉…」

また一口飲もうとした酒を秀吉が横から奪う

「阿呆が!これは供物だっていっただろう!!」
「おい。大声出すなよ。子鈴が起きるだろう」

秀吉の声に今まで黙っていた前方、信玄が声をかけた
それに秀吉は、「う」と言葉を飲込む
それは、身に覚えがある行為だ
以前、寝入っていた湖を大声で泣かせてしまった経緯がある
これに関しては、何も文句の言いようが無いのだ

幸い眠り続ける二匹に、一行の歩みは早く
予定より早い時刻に飯山城へ着くと、出迎えた高梨は緊張の面持ちで皆を迎えた

『着いたか』
「白粉さん、起きてましたか?」
『鈴のおかげか、すっかり寝込んでいた。おかげで、酔いもないな…』
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