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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


返ってこない返事

(…っ、やっぱり…)

謙信の着物を握った手が更にぎゅっと固くなり、身をすくめた湖
兼続の背から視線を反らそうとした時、声はかかった

「申し訳ありません、湖様っ!」

くるりと向き直った兼続の顔が目に入る

(かねつぐ??)

その表情が、ひどく慌てているのだ
そして、その後ろには口も目も開けっ放しの男の子

「え…っ」
「喜之介が…」

「なんだ?本格的に気を失ったのか?」

信玄が、その様子に気づきため息を零した

「さようでございます…少々時間をおいた方がよろしいかと…湖様、申し訳ございません」

湖の手が謙信の着物を離した
そしておもむろに兼続に近づくと、兼続の肩越しに後ろに居る少年の様子を伺うのだ
湖より少し年上の少年の顔をじっと見ていると

「湖様?」

兼続に抱きつくように、後ろの子の目の前で手を振る

「…き、きのすけ」

小さな声で彼を呼べど、目の前で手を振っても反応しない少年

(…なんか、かわいそう…)

「湖様…某がかわって詫びを」
「いい」

「湖?」

兼続から離れて、信玄の膝に戻れば「ふぅ」とかるく息を吐いた
その息は、軽く気の抜けたような息だ

「うん。なんか…もうへいき」
「湖」

横からかかった声に顔を向けると、謙信の顔を見てにこりと微笑む湖

「だいじょーぶ。湖、きのすけと、なかよしするよー」
「…問題は解決していないだろう…こいつは、お前に」
「まぁまぁ、謙信。子ども同士の事だ。湖が、良いならこれ以上大人の加入は不要だろう」

謙信が何か言い続けようとするが、信玄が思い出したかのように

「だが…湖を侮辱した事については、後日誤らせねばな」
「ぶじょく??それって、おいしいやつ?」
「…湖、お前最近なんでも食べ物だな。腹でも空いてるのか?」
「ん??おなか、うん。すいたかもー」

この日、兼続は喜之介を担いで連れ帰った
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