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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


「どうも、なにもない。湖を傷つけたのは許しがたい…だが、湖はこの男児を処罰すれば、悲しむだろう…」
「では」
「湖を呼べ。面倒だが、立ち会ってやる…即、詫びをせよ。お前は職務に戻れ、こどもは別の者に家まで送らせる」

家臣は、そう言われると顔色が幾分戻ってきたようだ
そして、謙信に深々と頭を下げると息子を残し部屋を出た
喜之介は、父が出て行った部屋に生きた心地がしない
なんせ、この部屋に今居るのは、城主 謙信と、喜之介だけなのだ

はぁ…と、息が零れるたびに消え去りたい気持ちがこみ上げる




兼続出て行き、幾分か時間がたつがその戻りがない

「何をやってる…」

謙信がそう呟いた時、襖の外に気配が感じられた
兼続だけのものではない複数人の
シュッと乾いた音を立て、襖が開けばそこに居たのは、
信玄と兼続、そして…光秀にべったり抱きついた湖の姿だ

「悪いな、待たせた」
「・・・・・・」

信玄が苦笑いを浮かべ部屋に入ると、続いて兼続と光秀も足を踏み入れる

「なぜ、貴様が来る…明智光秀」
「それは、湖に尋ねるといいだろう。おかげで、着物が皺だらけだ」

目を細め、面白そうに笑いながら湖の背中を叩くも
抱きついた湖は顔を見せようとはしない

「…兼続」
「はっ…、それが…某が迎えに行った際には、普通にお話されていたのですが、喜之介の事を話すと側に居られた光秀様に抱きついたまま動こうとせず…理由も仰られないので、致し方無くそのまま連れて参った次第です…それと…」
「外の奴らの事か」

謙信の目が閉じられた襖を見れば、兼続はため息を零し

「白粉様は立場上ご心配だと着いてこられました。某それは解りましたが…佐助殿と幸村殿、それと秀吉様もそれぞれ思うところがあってか…連れだってきてしまい…これでは、喜之介が萎縮すると断ったのですが…」
「その喜之介なら、もう座ったまま気絶してるんじゃないのか?さっきから瞬き1つしないぞ」
「?!…喜之介っ」

信玄の言葉に、兼続が喜之介の側に寄っていくと背中を軽く叩く
視界の端にそれをとどめたまま、謙信は小さな背中の主に声をかけた
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