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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


「も、申し訳ございません!」
「頭を上げろ」
「で、ですが、謙信様…」
「かまわん」
「は…はっ」

頭を上げた彼の顔は、青ざめ汗がこぼれ落ちた
そんな父を見て、息子は事の次第を感じ取ったようだった

「さて…喜之介(きのすけ)、其はやはりそなたがそのような事を湖様に言ったとは…信じられないのだが…」
「……」
「これ、喜之介。兼続様に返答を…っ」

兼続に問われ、男児は一度頭を下げて唇を噛みしめた

「…戦も・・」

小さく零れだした声

「戦も特に起こらない…城内は落ち着いていると、父上が…」
「…そのような話…確かに覚えはあるが…それと、これとで何の関係が」

父は、息子の言葉をせかすようにしたが、兼続が首を振りそれを押さえた

「なのに…兼続様は、このところずっと…声をかけてくださらず…」

兼続は、家臣の子息たちを集め時折学問の時間を設けていた
それは、多忙時を覗けば定期的なものだ
だた、湖が春日山城に現われてからは開かれていなかった

「…父上に聞いても、理由が解らず。噂で聞けば、城内に女児が住まっているって…」
「さすがに二月以上絶てば、噂も漏れますな…で、なぜあのような事態に?」
「…少し前から、此処に父上の届け物をしている内に見ていたんです。あの子に馬術や学問を教えている兼続様を…でも、あいつ」

ばしっ!
「あいつ」という呼び名に、父が喜之介の頭を叩く

「湖様だ」
「…ずるい…」
「は??」
「女のくせに、ずるいんだよ!兼続様…1人いじめしててっ!俺、あいつ嫌いだ!!」
「ばっ!お前っ…も、申し訳御座いません!!」
「いってーよ!」

再び、頭を畳にすりつけられた喜之介にはもう父親しか目に入っていないようだ
はぁ…と呆れるようなため息が兼続から漏れた
謙信に至っては、先ほどから表情を1つも変えないでいるままだ

「理由はわかった。だが、そなたは男だろう。自分の思いを優先に…歳も下の女児を傷つけるなど、そのような教えをした覚えは一切ありませぬな」
「っ…」

兼続の声に、男児はびくりと反応し動かなくなった

「盗み見事態、どうかと思いまするが…今は、傷ついた湖様をどうするかが優先…いかがされますか?謙信様」

ちらりと視線を目の前の2人に当てれば、父は更に顔色を悪くした

「どうもなにもない…」
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