第25章 桜の咲く頃 二幕(六歳)
「湖さん、大丈夫だよ。光秀さん、今朝見たけど怪我は白粉さんの薬で治ったって問題なさそうにしていたし。ああいうのは、幸村なり、光秀さんなりが先に気づくべきだ。湖さんは悪くないよ」
「でも、湖。きづいたんだもん…こんどから、きをつけるから。ちゃんと、いうから。だから…湖のこと、きらいにならないでね」
大きな瞳から涙が落ちるんじゃ無いかという表情で、見上げられた二人はそれを見て固まってしまう
「な…「きらい」とか。お前、そうゆうことそんな顔を言うな…」
「…六歳児に見えないんだけど…気のせいじゃなさそうだね。うん…」
ぼろりと涙が零れそうになるのを後ろからすくい取ったのは…信玄だ
「こらこら。大人二人がなんで子どもを泣かせてる?」
「ととさまっ…ちがうよ。なかされてないの。湖が、「ごめんなさい」してたの」
「何をだ?」
そして信玄にその理由を言えば…
「そんなのは湖が気にとめる必要は一切無い。しかも、そんな事で嫌われたりするわけ無いだろう?」
「ん…」
ぐいっと、また零れてきた涙を親指で救う信玄は笑いながら湖を抱き上げた
「でも、こどもが何かと目敏いのは確かだな。今度、そんなことがあれば、すぐに教えてくれればそれは大いに助かる。なぁ、幸、佐助」
「そんな事にならないよう気をつける…でも、もしあれば頼むな、湖」
「子どもは目敏いか…確かに。この感覚、忘れないようにしよう」
湖に笑みが戻ったのはすぐだった
一方、光秀が休む部屋の前についた白粉
中から声がかかったのは、部屋の前で足を止めて直ぐだ
「白粉か?」
その声は、予想していた人物とは異なる
「豊臣 秀吉…」
すらりと襖が開けば、そこに居たのは光秀と秀吉だ
「ずいぶん遅い目覚めだったようだな」
「…薬は効いたようだな」
光秀からの問いかけには答えず、その様子を見て白粉へ部屋に上がらず廊下から声をかけた
「あぁ。お前の薬がえらく効くと聞いた。妖や神の薬は、ずいぶんと便利なものがあるんだな」
「あれは、おかか様の樹液が含まれているからな…口外するなよ、当てにされても困る。今回限りだ。湖を助けてくれた礼だ…」