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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


「まったく…昨日に引き続き無礼な奴らだな…今朝は湖の眠りを邪魔してくれるなよ。昨夜、ずいぶん夜更かししていたようだからな」
「…前半は今は聞き逃してやる。湖が夜更かしとはなんだ?お前達、あんな子どもを一体いつまで遊ばせている?!生活環境が成ってないんじゃ無いか?」
「「……」」

静かな視線でのやりとりの中、光秀は背を向けて歩き始める
信玄と秀吉の互いの視線が外れない中

「そうか、では。湖が起き次第、いじめてやるとしよう」

小さくほくそ笑む声が聞こえてれば、その視線は歩きさる背中に向けられた





少し時間が戻り、昨晩の出来事
謙信に連れ戻された湖の姿を見て、白粉の表情が一気に不機嫌になった
その身を包んでいたのは信玄の羽織
その事から、光秀の部屋に行ったあとの経緯がよく解る
湖もまた母のその表情を見て、まずいと思ったのだろう
抱えられたまま謙信の着物から手を離さないでいた

「湖…」
「あのね…お、おさんぽ!うん!おさんぽしてたの!」

はぁーとため息をつき、白粉は謙信に礼をした

「連れ戻してくれて助かった」
「…」

謙信は、湖の手が緩むとその身を畳に下ろす

「…そうか…母親とはそうゆうものだったな…」
(心配し、怒り、褒め…常に子を気がける)
「…湖、母にあまり心配をかけるな」

意外な言葉に白粉の目が見開く
その瞳に映っているのは穏やかな笑みを浮かべ、湖の頭を撫でる謙信だ

謙信は、少し前に白粉が話をした事が頭の片端から離れずに居た

―成長のちに自分の存在を記憶から消す。自分がいなくても記憶はなりたつ

他人事であれば、さほど気にとめなかっただろう
だが、それは湖の記憶だ
成長したのちも、記憶として残る時間だ

「お前は…母親だ。子から母の記憶が無くなることはありえんだろう…」

その言葉が、いつぞや自分が言ったことに帰ってきているのだと気づいたのは、謙信が部屋から去ったあとだ

「かかさま?けんしんさま、なにをいってたの?」

(謙信…あの若造…)

湖が、白粉の袖口を引けば
白粉は悲しそうな笑みを浮かべて湖を抱き寄せた

「湖」
「かかさま?」
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