第25章 桜の咲く頃 二幕(六歳)
城に戻った三人
光秀は手当をするのに、別部屋に向かい
湖は、幸村に白粉が待つ部屋へ運ばれた
「…っ、誰の血のにおいだ」
鼻の良い白粉は、すぐにそれを見破る
簡単に話聞かせると、湖を抱いた白粉は「解った」とだけ手短に答えた
「湖、俺は兼続とさっきの事を話さなきゃいけない」
「…うん」
小さく答えた湖の頭に、ぽんと手を乗せると
「大丈夫だ、大した怪我ではないはずだ」
と、そう言い部屋を出て行く幸村
その気配が遠ざかると湖は、白粉の方を向き
「かかさま…、湖のおまもり…おけがもなおる…?」
白粉は予想していた通りの問いに息を着き
「湖、お前…信玄に何度「お守り」をした?」
「二回…」
そして少し考えてから
「残り一回を使うなら有効だ…ただ、完全に直せば明智光秀に気づかれるな…」
「でも…っ」
「もう一点…信玄にもう一度使うのも禁ずる…お前と鈴の為だ。おかか様と約束したとおり、三度までだ」
兼続と幸村は、その日中に先ほど山賊が現われた場所から根城に検討をつけ、夜間のうちに対策に出た
住み慣れた土地での夜間行動、闇夜であろうが何の支障もない
また事情を聞いた秀吉もこれに加わり、三人の武将が小隊を連れ山賊の根城を叩く
それはあっという間の出来事で、幾分の時間もかからないことだった
光秀は、この日だけ春日山城内の一室で休む事となった
深夜、信玄の部屋には謙信の姿があった
「湖はどうした?」
いつもなら、信玄に抱きつき寝ている湖の姿がない
「今夜は、白粉から離れないだろう」
「そうか」
酒を飲んでいた信玄は、謙信にもそれを勧める
月がぽっかりと丸く浮かんでいた
「今夜は満月だな」
「ああ」