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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


幸村の肩越しにちらりと視界に見えた草原の一部が不自然な動きをした

(…?)

なんだろう…?そんな事を思わず、ちゃんと口に出せば良かったと湖は後から後悔することになる

そこ部分がキラリと光り、声が出たと同時に光秀の声と被さる

「あ…」
「伏せろ!」
「ッ…」

幸村はかかった声に、直ぐに反応し湖の頭を抱えて伏せた
そして先ほど同様、響く音が草原にすると

ドサリと草に倒れる音と共に、男のうなり声がするのだ

「ぐぁあ…!!」
「…まったく…黙って倒れていれば良いものを…」

幸村の拘束が緩み、馬が後ろに向けられれば…

「っ、かた…!」
「明智…っ、お前…」

光秀の肩だ
矢尻が刺さり、着物に血が滲み始めていた
幸村が急ぎ馬を隣につけると、手で背中を押しながら矢を抜く
矢が抜かれれば、着物はみるみる血に染まっていくのだ
目の前で見ていた湖は、それに言葉も出ないで顔色を悪くした

「悪い…っ」
「なにがだ」
「…俺が…甘かった…」

手早く手ぬぐいを割き、光秀の肩を止血する幸村
その手を遮り、後の処置を自分で済ませると光秀は何事も無かったように

「さて、帰るか」

と先を行く

「待てっ、馬を下りろ。ちゃんと手当を…」
「この場に残る方が物騒だ…湖の顔色を見てみろ」

そう言われて、幸村は前に座らせている湖に気づいた
その顔色は真っ青になって小さく震え、光秀の肩一点を見ているのだ

「…くそっ。戻り次第、すぐに手当してやる」
「こんな傷は手当てなど不要だが…」

湖の顔を再度見て、光秀はため息を零す

「湖、湖…」
「…あ」
「心配するな。血は出ているが、すぐに止まる」

真っ赤に染まった光秀の左肩周り
幸村の止血に巻いた手ぬぐいにも、その血が滲み始めている
それを見て、光秀の言葉にようやく声が出ると、湖の目から大粒の涙が零れ始めるのだ

「…怖かったか?急ぎ、帰るぞ」

(ちがう…、こわくてなみだがでるんじゃない…)

幸村も何で湖が泣いているのか察したように、その顔を自分の方へ引き寄せると

「…解った」

と言い、馬を駆けさせた

(…みつひでさまのけが…ちがいっぱい…)

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